おかまちゃんの頼もしさ


店の客の中に一人、18歳くらいの小さくてあどけない女の子がいた。
その子は店の常連客らしくて、まるで従業員かのように、
各テーブルの灰皿や空いた瓶などを小まめに取り替えている。
彼女が彼に目配せしているのに気付いたのは、
彼女の存在に気付いてから20分程経った頃であったかと。
気付けばなんとなく二人が目でコンタクトを取り合っているかのようだった。
ある時彼は私の隣を立って、トイレに行った。
その後をあの娘が追う。
二人の様子を見逃すまいとトイレの方向に私の目は釘付けであった。
トイレの扉が開き、彼が出てくるのを待ったが、
出てくるはずの彼は出て来ず、それどころか小娘がトイレに入り、
扉が閉まったのです。
信じられませんでした。
わなわなおろおろしている私の代わりに社長がトイレへ。
ノックしてみるが鍵はかかっている。
ものすごく長く感じたが一分足らずで彼が出てくる。
どんな顔をしていいのかわからなくて、
隣に座った彼と目も合わせず、顔を見る事も出来なく、
とにかくその場に居た人達全員からものすごいブーイングの嵐が彼へと。
真相は、店内私と彼が恋人関係である事は周知の事実であったが、
これはイケるんではないか、と思った彼女が、
トイレに無理矢理押し込め作戦で、なんと信じられない事に
体の関係を求め、拒んだ彼のポケットにあった携帯を奪い、
彼の携帯から自分の携帯に電話をかけ、なんなく番号をゲットした。
という次第でありました。


ありえますか?こんな状況。
あなただったらどうしますか?


私としては一通り彼を非難した後、
娘にビンタの一発でも食らわせようとしたのだが、
サムイので止めました。
私は極妻のように、何があっても動じない。
彼のモトへ女がやってくるのは、いい男の証明だ、と
大きな心を以ってして彼と付き合っていきたい。
そんな動じない、美しい女になりたいのです。


まぁその後、おかまちゃんやらその他客達が、
娘に冷ややかな視線を浴びせ、おかまちゃんは娘に
私の変わりにビンタを一発食らわせ、
彼女は店を出ざるを得なかったという結末なんですが。
「おかま二人であいつにヤキ入れといたげる。(鼻にかかった声)」
「私ダイッキライなのよ、こういう事〜。ごめんね。(相変わらず鼻にかかった声)」
というおかまちゃんの行動、言動にかなり救われたのは事実。
色んな修羅場を潜って来たであろう彼ら(もとい彼女ら。)。
すっごく頼もしかったぞ!


まぁ性懲りも無く、去り際に私たちのテーブルまでやってきて、
「それじゃあ、お休みなさぁ〜い。」
と娘が言って来た時はさすがに、右手で拳をつくり、
もう少しでそれを振りかざすところでしたが。


なんともまぁ男女関係から生じる憎しみや嫉妬というのは、
得てして醜いものです。
だから私は動じない、美しい女になりたいのです。