紅茶の色


仕事を辞める事にした。
私の機能障害胃炎は間違いなく同僚に起因している。
昼休みに、銀座は中央通りを、
一人で涙しながら社長に電話した。
社長はその同僚と働く者皆が、
私のように辞めて行く事を嘆いていた。
社長の期待に応えられなくてごめん。
社長と話した後、彼に電話をしたら、
「今からそいつをシメに行ってやる。」
と言い出したので丁重にお断りした。


私は子供ですか?
何か我慢出来ない事があるとそこからすぐに
逃げ出すようなそんな柔い奴ですか?
そう自問するが、自分の身体の方がかわいい。
我慢し働き続けるのも美徳だろうが、
何せ堪えられない。
悪いが辞めさせて頂く。
勝手に一人で生きていってくれ。
自分の母親と同じ年の女に幻滅の一日。
中学時代以来に味わった同性への酷い嫌悪感。
帰り道に通りかかった花屋で自分に小さな花束を買った。
それを眺めながら家に帰った。
気分が良くなった。



そう思ったら何もかも新しくしたくなった。
結婚したし、髪切ったし、
仕事も新しく始めて、
新しい家に引越し出来たらすごく最高なのに。
そんな気分で高校時代の友人と、
お気に入りの喫茶店で紅茶を飲む。
紅茶の色ってなんて素敵なんだろう、と思う。
これ以上美しい色ってあるだろうか?
紅茶を飲む前に毎回思う事。
家に帰ったら、さっき買った花束を花瓶に挿そう。
入籍祝いにもらった花束と一緒の花瓶に挿してあげよう。
そしてドライフラワーにするんだ。